凛マガジン(展示会)

●展示会や見本市で

●作家先生は、カリスマ店員

●爆売れは‥‥しない

●無料のオマケが戻ってくる(T_T)

●補正できない場合も‥‥

●特性上、補正不可能(T_T)

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●展示会や見本市で バブルの頃は頻繁に見られましたが‥‥皆さまは、呉服の展示会や見本市といった催し物に行かれたことはありますか? 主に問屋さんの主催が多いのですが、大きなホールや会場を借りて、複数の複数のメーカーさん、工房、作家さんたちが、商品を展示販売します。 週末の2~3日限定で開催され、終了すると別の場所へ‥‥全国を転々と回ることもあります。 会場で人気なのが、作家先生のブースです。「友禅の〇〇先生の新作公開!」「しぼりの△△先生、ご来場!」など、CMやチラシで宣伝されることもあります。 会場は、出店者ごとに区画分けされています。その一角に、作家先生の専用ブースがあります。 いつもは工房で作業している先生方が、作務衣姿でブースに座っていて、直々に商品の説明やお見立てをしてくれる‥‥というわけです。 作家先生の作品を所有することをステイタスだと感じる方は多いですから、作品が見られるだけでなく、直接話ができるとなると、特別な機会となります。

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●作家先生は、カリスマ店員 作家の先生と話ができる‥‥!これにはきちんとした(笑)、業界のウラ事情があります。 なぜ、貴重な創作活動の時間を割いてまで、先生方を現場に呼び寄せるのか?当然ですが、その方が目立つし、PR効果があって売れるからです。 展示会のスケジュールが決まると、主催する問屋さんから先生方に連絡が行きます。〇月〇日から□□県でやりますから、来てくださいね、みたいに、先生方を手配するのです。 余談ですが、さらにウラ事情を紹介すると‥‥先生方の中には「もどき」もいらっしゃいます。作家活動をしていない人が、先生に扮しているケースがあるんです(!) え?!どーゆーこと?! 呉服業界の人間で、商品知識も豊富であることが条件ですが‥‥作家でなくても、「それっぽい風貌の人」は、「先生」に抜擢されやすいんです(^-^; 立派なヒゲがあるとか、ロン毛を束ねているとか‥‥芸術家っぽく見えるルックスだと、にわか先生にスカウトされるかもしれません(笑)。 話を戻しますが‥‥要するに、作家の先生が商品の説明をしてくれたり、相談に乗ってくれたりすると、商品の格が上がったような感じがするわけです。 先生ご直々のお見立てとあらば、「ちょっと高いけど、買ってみようかな」となるお客さまは少なくありません。 一般的に、販売員(マネキンさん)は女性が多いですから、男性が接客するだけでも印象が変わりますよね。主催者や出店者は、そうした効果も見込んで企画しています。

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●爆売れは‥‥しない 数多くの品物に、先生方の直接販売‥‥華やかな展示会場ですが、それでも昔に比べると、商品の動きは鈍くなっています。先生のお薦め効果で、展示会の売上が爆上がり‥‥とはいきません。 一円でも高く、一点でも多く売りたい主催者に対して、お客さまは、一円でも安く、お得に買いたいと思って来ています。 買ってもらうために販売価格を下げると、利益も少なくなります。そこで、値段を下げずに買ってもらえる秘策(?)があるんです。 会場で商品を売る会社や作家さんたちは、新作だけでなく、ちょっと古い商品や、B反のような難モノを持参しています。 迷っているお客さまに、「お買い上げいただいたら、このお襦袢もお付けしますよ。ここに小さな難がありますが、着たら表から見えないし、品質はとても良いものです」と、難モノのプレゼントで販促をするのです。 難ものは、正規の商品として販売することはできません。商品の値段を下げて売るより、難モノをプレゼントにして、お得感で買ってもらう方が、難モノも無駄にならないし、お客さまにも喜ばれます。

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●お客さまは承諾済なのに‥‥ オマケは、B反品の他、店頭展示で汚れの付いた和装小物などをよく見かけます。 もらったオマケを、そのまま持ち帰る場合は問題ありません。 しかし、お襦袢用のB反などをオマケしてもらった場合は、仕立てが必要なので、そのままでは使えません。 また、「買ったきものが仕立て上がったとき、いっしょに納品して」と言われることがあります。そういう場合、オマケは、購入した商品といっしょに、売り手が管理します。 ところが、オマケが検品に引っかかり、メーカーに差し戻されるケースがあるんです! そりゃあ通らないでしょ、難モノなんだから。でも、オマケは商品ではありません。お客さまのご要望で、いっしょに入れてあるだけなんです。 しかし、売場でのやりとりを知らない検品担当者は、「こんな難モノを、流通させるわけにはいかん。メーカーに差し戻して、直してもらって」と言うわけです。 無料のオマケを同梱しているだけ、という説明が、通用しないんですね(>_<) 極端な場合は、伝票に「粗品 ¥0」と書かれてあっても、検品でアウトになることがあります。

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●無料のオマケが戻ってくる(T_T) そして、何とも理不尽な話ですが、「なんぼ説明しても、聞いてくれへん。凛さん、なんとか格安で直して~」と、ご相談に来られる方が、毎年数件はあります。 僕らも、なぜこの説明が理解してもらえないのか、本当にわかりません。気の毒なのは売り手(メーカーさん)です。 難モノの不良在庫とはいえ、生産コストのあるものを無料で提供し、売上を増やそうと工夫しているのに‥‥補正を強いられ、補正でもコストが発生したら、展示会に出している意味がありません。

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●補正できない場合も‥‥ 僕らも、こういうご依頼で利益を出そうとは思いません。実費程度で協力したいと思いますが、検品に通らなくてはダメなので、なかなかの難題です。 そして中には、補正が難しい品物もあります。 最近の事例では‥‥お襦袢の生地と、草履バッグです。 お襦袢の生地は、生地難(織る工程で、機械の作動や混入物などにより生地にキズや凹凸ができる)でした。 完全に消すことは無理だったので、きものを仕立てるとき、断ち合わせを変更してもらうことにしました。 しかし、経ち合わせの変更は、難のない生地には行わない手順です。そこで、検品を通すため、「墨打ち(すみうち)」を行いました。 墨打ちとは、パーツの取り方がわかるよう、生地に印を入れる作業です。 墨打ちがあることで、仕立屋さんは断ち間違いをしないし、指示のもとに断ち合い変更をした、という証明になります。

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●特性上、補正不可能(T_T) 草履バッグは、品物の特性上、簡単に直せません。 バッグなどの小物は、きものの生地で作られていますが、それだけだと薄すぎます。 強度を上げ、しっかりした形状を保つため、接着剤で厚紙に貼り付けてあります。なので、生地だけを外して洗うことができません。 どうしても補整が必要な場合は、まず、使用されている接着剤が何で溶けるのか、テストをします。そして、接着剤が溶けないように、また厚紙を痛めないように、使用する薬剤や補整方法を確定しなければなりません。 こちらのケースは、依頼者さまが常連のお取引先でした。なんとか助けて欲しいと懇願されたこともあり、山盛りのテストの結果、何とか補正することになりました。 が、通常はお断りしております。手間と時間がかかり過ぎて、まったく採算が合わないのです‥‥m(__)m 僕らの立場から言えることは‥‥展示会での難モノのオマケは、商品として売れないものを活用するイイ方法だと思います。 もし、皆さまが難モノのオマケをもらうことがあったら‥‥ お願いです!少々重くても、オマケだけは持ち帰ってください。

2023年06月30日