凛マガジン(ダントツに多いのは)

●一般の方でダントツに多いのは

●同様の事例

●触っただけで

●やったらアカンやつ!

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●一般の方でダントツに多いのは‥‥

帯のご依頼には、非常にわかりやすい特徴があります。一般の方の特徴は、ほとんどが着用されてから発症するということです。 つまり、きものを着たときの締め方、着用中の状況によって難になるのです。 なかでもダントツに多いのが、「色移り」です。 藍染めの製品は、色が落ちやすいことで知られています。もちろん、染色工程の後には、色を定着させるための「蒸し・水元」という工程を通します。 しかし、どんな高級品であっても、藍染の性質上、色落ちを完全に防ぐことはできません。 ※藍染の品物をお持ちの方は、「そういうものなんだ‥‥」と思っておいてください。 たとえば、白いきものに藍染の帯をすると、粋でカッコイイですが‥‥少し擦れるだけでも、藍の色がきものに移ってしまいます。 脱いだ瞬間に、帯の下が青く染まっているのですから、大変驚かれてご相談に来られます(買ったお店や問屋さん経由で来ることも多いです)。 藍染は、古来は「色落ちして当たり前」という認識が浸透していました。 もし色落ちしても、「藍染やし‥‥仕方ないか~」で片付けられたり、むしろ、「なんで薄い色と合わせるの?!色が移るってわかるやん!」みたいに、知識がないから品物がダメになる、という考え方が主流だったのではないかと思います。 でも、残念ながら今は違います‥‥。 色落ちするのは品物が悪い、メーカーさんが悪い!となってしまい、手間暇かけた高級品であってもクレームになることがあります。

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●同様の事例

藍染に限らず、天然染料は「完全に色を留めるのは無理」と認識しておかれるのが賢明だと思います。 大島紬などで有名な「泥染め」や、草木染めなども同様です。 藍染の帯と逆パターンで、藍染のきものに色のうすい帯を締めて、帯が青くなった!ということもあります。 帯が藍染の場合は、「藍色が落ちないような加工をしてほしい」、逆に、きものが藍染の場合は、「帯についた藍色を取って欲しい」というご依頼が多いです。 ある程度は、決まった手順で落とすことができますが、完全には無理!という場合もあります。 また、クリーニングに出されたり、慌てて水で落とそうとされると、それが原因で直せる難が致命傷になることもあります。 このメルマガでも、しつこくお伝えしていますが、重ねてご注意ください。 商品知識という視点から言うと、売り方の問題もあります。販売員さんに知識がないとか、たくさん売りたい!という気持ちが原因です。 高額の草木染などで、色落ちのリスクについて説明されないことがあるようです。 高い品物を購入するのは、きものに詳しく、経験も知識もある人‥‥と思いがちですが、そういう人ばかりではありません。高額商品であれば、なおさら、きちんと説明してあげて欲しいなぁ~と思います。

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●触っただけで‥‥ 長年、いろんな商品を見せていただいてますと、勘と経験で「これは危ない色やな!」と察知できることがあります。 見るからに「落ちそうな色合い(!)」というのが、あるんです。 あと、触った感覚で危険を感じるものもあります。完成直後で、色落ちするかどうかわからない状態でも、触った感触で、指先センサーが反応するんですね。 蒸し水元で定着を試みても、生地の表面に染料の層があるような、どこか粉っぽいような‥‥独特の手触りがあるんです。 色落ちのリスクを感じるのは、やはり天然染料系の品物が多いです‥‥。 落ちるかどうか、確実に判断するにはテストをしています。でも、テストなしでも、色落ちすると確信できるものもあります。 そういう品物は、「これ、大丈夫? 色落ちしそうな感じやけど‥‥」と、依頼者さんにひと声かけています。

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●やったらアカンやつ! あってはならないことですが‥‥激しく色落ちする品物の中には、粗悪品や、意図的な手抜きが原因のものもあります。 「アカンやつ」に多いのは、染料の定着を促す工程「蒸し・水元」での手抜きです。 通常、色落ちしやすい商品は、蒸し・水元(高温の蒸気を当てたあと、水で余分な染料を洗い流して色を定着させる)を、複数回繰り返します。 色落ちが激しい品物ほど、何度も行います。 ところが、この繰り返しを怠って、ひどい場合は1回しか流さなかったり‥‥もっと劣悪な例では、1度でも水で流すと絵柄の彩色がにじむので、彩色をクッキリさせて印象を良くするため、蒸し水元をしてない?!という品物も、見たことがあります。 これは、呉服や和装小物の欠点でもあると思うのですが、品物が完成した段階では、色落ちするかどうか、わからないんです。

2023年02月28日