1凛マガジン(売れてない荷に返品?)

●売れてないのに返品?!

●スピード管理

●管理方法が変わった

●商品管理との相性

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●売れてないのに返品?!

最近、ある西陣織のメーカー(=西陣織で、帯の生地を作っている)Aさんと話す機会がありました。 A社とは、コンスタントな取引はありません。しかし、狭い業界ですから、顔を合わせることはあります。 同じ業界の仲間として、互いの近況や愚痴(笑)も含め、情報交換をさせてもらっている間柄です。 Aさんがおっしゃるには、新品の商品が、売れる前に難が出て、返品されるトラブルが増えてきた、とのこと。 お話しているうちに、原因はだいたい3つに分けられるのでは?と気づきました。 1つ目は、物流システムの変化。 2つ目は、古くからある「浮貸し」という、呉服販売独特の慣習(辞書を引くと、金融業界で使われる用語と説明されていますが、呉服業界にもあります。意味は同じです)。 3つ目は、前出の2つを配慮しない、商品を扱う人たちの「質」の変化 です。 このような要因が重なって、メーカーさんが作った新品が、いろんな人の手を介する途中で難が出て、まだ売れてないのに返品されてくることがあるのです。 今回からは、物流経路で生じる難の事例と背景を、連載で解説していきたいと思います。

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●スピード管理

通販で注文すると、翌日届くのは当たり前という、大変なスピード時代になりました。 膨大な人からの注文を効率的に管理して、出荷翌日に届くのは、AIやロボットの活用など、物流システムの発展が大きいでしょう。 そして、高速での商品管理に必要なのが、商品の「タグ付け」です。 ※タグ付けというと、SNSを連想する人が多いと思います。タグを入れることで、関連のある情報を瞬時に集めることができ、発信者にも受信者にも便利な機能になっていますね‥‥。 呉服業界には、完全手作業だった昔から、タグ付けに似た管理方法があります。 一例として、反物の端にメーカーの名前が織り込まれている商品があります。これは生地の製造者を示すラベルのようなものです。 他にも、メーカーから問屋を介して小売店に行くまで、関わった中間業者の札が付けられることが、当たり前に行われてきました。

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●管理方法が変わった そして、時代とともに、ラベルやタグの素材や意味は変化しています。 昔は、コヨリを通した和紙製の札が、商品を傷めないように付けられていました。 しかし、素材が柔らかいと、札が折れ曲がったり、ヨレたりします。短時間で見やすくするために、最近は硬くて厚い紙製のタグが増えています。 タグを留める素材は、和紙製のコヨリではなく、プラスチック製のピンに代わってきています。それを、ピストル状の器具で打ち込んでいく‥‥とにかくスピードが優先されています。 バーコードやQRコードは、シールに印刷したものを貼り付けることが多いです。 シールの糊は、多様な商品に対応できるよう、樹脂系のものが多いと思います。

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●商品管理との相性

勘の良い方ならピン!と来ているかもしれませんが‥‥ 呉服の性質上、こうした商品管理グッズと、あんまり相性がよろしくないのです。 たとえば、プライスタグ。今は、反物にも、タグガンが使われています。 もちろん、品物に影響がないよう、端やミミに付けるのですが‥‥穴が残ってしまったり、プラスチックのピンが引っ張られて、ミミが裂けたりすることがあります。 バーコードのシールも同じです。 強粘性でなくても、強い力で引っ張ると、織目が崩れたり糸が引けたりするリスクがあります。特に、ふんわりと織られた生地には、相性が良くありません。 シールがキレイに剥がれても、粘着成分が残って、ネバネバしてる!ネバネバにホコリが付いて、黒っぽいシミになってる! といったトラブルが増えています。 ちなみにこれ、袋や箱に入った商品なら、問題ないんです。タグで袋が破れても、シールがキレイに剥がれなくても、商品には影響がありませんから。 呉服は、梱包してからタグ付けしても、中は見えないし、一反ずつ取り扱えない‥‥。 札やタグを、直接商品に装着する必要があるので、トラブルになりやすいんですね。

2022年11月30日