凛マガジン(最近増えているトラブル)

●最近増えているトラブル

●クリーニングもいろいろ

●湯のしも同じ

●悲惨な事例
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●最近増えているトラブル

冒頭からストレートな見出しになりましたが‥‥ここ1、2年で、急に増えてきたかな? と感じているトラブルがあります。 特徴的なのは、「シミ」「黄変」「虫食い」など、症状とは関係ない点です。 実は‥‥症状そのものではなく、関与した業者さんの対応が原因で、もともとの難が重症化してしまった、というトラブルなんです。 対応が不適切で、本来ならキレイになるはずの難が、治らなくなった──という相談が、以前よりは確実に増えているんです。 どんな難が、どんな状況の中で重症化してしまったのでしょうか‥‥。実例を交えながら、分析・解説していきます。 ==============================

●クリーニングもいろいろ

重症化の原因となるトラブルで比較的多いのが、「和装クリーニングの神話」です。 洋服のクリーニングは、きものに使えない‥‥。でも、和装クリーニングを謳っている業者さんだったら、きものに詳しいし、どんな汚れもキレイに落としてくれる‥‥と信じている方が、少なからずいらっしゃいます。 でも実際は、難が見つかったから、クリーニングに出してみたけど落ちなかった! ということもあります。 クリーニングから戻ってきた品物を見て驚き、慌てて買ったお店に相談‥‥という事例も、よくあります。 相談を受けた販売店が、仕入れた問屋さんへ連絡 → 問屋さんがメーカーさんへ → 凛へ のように、流通ルートを逆行して持ち込まれる品物は多いです。 お預かりした品物を検品してみると、クリーニングで落ちない難を、強引に処置されていることがあります。 仮に、クリーニングで落とせる、と予想していたとしても‥‥実際に作業して落ちなければ、そこで止めてくれた方が、品物にとっては親切なのです。 不適切な判断や補正によって、直せる難も直らなくなった!という事故が、実際に起こっています。 落ちなかった難の上から、ご丁寧にプレスまでされている品物もあります。 難にタンパク質が含まれていたら、プレスの高温で凝固・変質し、落ちなくなるのに‥‥。クリーニング屋さんなら、そうなることは予測できるはずなのに‥‥。 うまく落ちなかったら、そこで作業を中断するとか、依頼者さまに事情を話して品物を戻す、というケースは少ないようです。 そういう品物に限って、やっちゃえ~!で押し切ってしまうと、重症化するのです‥‥。

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●湯のしも同じ

熱や蒸気を用いるという意味では、前回まで連載していた「湯のし屋さん」も同じです。 仮に、湯のし屋さん(整理屋さん)が判断を誤り、タンパク系の汚れに高温の蒸気を使ってしまったら、同じ結果になるでしょう。 現在、凛がお取引させていただいている整理屋さんは5軒ほどありますが、幸いなことに判断ミスで難が重症化したという事例は、一度もありません。 理由はシンプルです。そして、とても重要なことでもあります。 1.依頼する側・される側の双方が、検品をきちんとすること2.気づいたことがあれば、報告・確認すること です。 ちょっとした「アレ?!」を放置しない方針は、ひと手間かかっても不可欠だと思っています。 湯のしに出す前に、凛でも検品をします。難があるけど、湯のし工程の後で対処が可能だとわかっているものもあります。 それでも、凛がお願いしている整理屋さんは、必ず連絡をくれます。「小さい穴があるけど、このままやってもいいの?」みたいな感じで。 僕らも検品してからお願いしていますが、見落とすこともあるかもしれません。なので、難を把握していても、連絡してくれると非常に頼もしく、ありがたいです。 ネットワークと信頼関係の強みだと思っています。

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●悲惨な事例

シリーズ最終回として、今でも忘れられない、もったいない、かつ悲しい事例をご紹介します。 あるメーカーさんから、一着の訪問着が持ち込まれました。 飲食店か宴席でのアクシデントだと思われますが‥‥ 肩先から裾まで、赤ワインが付着。頭から浴びたかのように、広範囲でシミになっていました(T_T) 赤ワインは、飲食物の中でも怖がられるものです。 が、誤解がないように書きますと、直後に適切な処理をすれば、決して怖れる必要はないのです。 で、この品物の持ち主さまは‥‥良かれと思って、和装クリーニングに出されたようです。 そして‥‥そのクリーニング屋さんは‥‥ 手順通り、揮発溶剤で洗い‥‥ワインのシミは落ちなかったけど‥‥手順通り、プレスまで全行程を行いました。 その結果、熱によって赤ワインの色素が定着し、広い面積で「落ちないシミ」になってしまったのです。

2022年10月01日