凛マガジン(生地の難)

●生地織り工程での難

●機械の停止

●目飛び

●色の差、光沢の差

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●生地織り工程での難
、生地難は発症の原因も種類も大変多いので、まずはどんなものがあるか、先に説明しておきたいと思います。 【生地を織る工程で起こる生地難】※実は、これ以外にもいろいろあるのですが‥‥ 1.機械停止などのトラブル2.目飛び3.異物混入4.糸の節による生地のひきつれ、組織の不均一 などです。 なお、これらの症状が白生地の段階で見つかるか、染めてから発覚するかによっても、商品の価値や対応方法が変わってきます。

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●機械の停止

※タテ糸のことを、織機の用語では「経糸」と表記するのが正しいようなので、以降「経糸」とします。 昔は手作業でガチャコンガチャコンと織っていましたが、今の織機は電動です。電動になって生産性は格段に上がったのですが、ものすごい高速で動いているため、緊急停止すると弊害が出ることもあります。 機械には、トラブルが起こると自動で停止する機能があります。コマに巻いてある横糸がなくなった時も、自動で停止します。 コマに巻かれた横糸が、機械にセットされた経糸の間を、高速で往復します。 ただ、コマに巻ける糸の量には限界があります。だから、生地を織っている途中で糸を使い切ってしまうことが、よくあります。糸がなくなると機械が停まり、職人さんが新しい横糸を継いで、再稼働させます。 機械が停止すると、それまで上下交互に動いていた経糸の動きも止まります。停止している間、経糸は、上下に開いたままです。動いてないので、開いた状態で圧力がかかります。 停止時間が長くなればなるほど、経糸にかかるテンションは運転時よりも強くなります。そして生地が織り上がったとき、スジ状になって現れることがあります。 機械が停止したところだけ、組織の織り込みの密度が高くなり、スジになるのですね。。。 厄介なことに、このスジは、白生地が織り上がった段階では目立ちにくく、染めてから発覚することが多いのです。

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●目飛び

次に、目飛びについて解説します。目飛びが起こるのは、地紋(織り方に変化をつけて、生地を模様織りにする技術)のある生地が多いです。 地紋を表現するには「紋紙(もんがみ)」という厚紙を使います。機械の種類などにもよりますが、紋紙1枚あたりの大きさは、7~8センチx40センチぐらいで、模様を表現するための穴が空いています。穴の有無によって、織機の経糸の組み方が変わるようになっていて、地紋の設計図のようなものです。 何枚もつなげた紋紙を機械にセットして、地紋織りを表現する仕組みです。シンプルな地紋でも何百枚、多いものだと千枚を超える紋紙がセットされます。 紋紙には、年季の入ったものも多いです。古くなると、穴の変形、キズ、ホコリの付着などで、設定通りに機械が動かないことがあります。すると、その部分が「目飛び」になります。 目飛びは、よく見ると肉眼でもわかりますが、気づかないこともあります。そのまま染めると、目飛びの部分だけ、光沢感が違ったりします。 目飛び自体が難ですが、色が違って見えると、シンプルに目立つんです。このような難があると、店頭に出せなくなったり、B反に降格されるなど、商品価値を下げる損害となります。 しかし、既に織り上がっている生地の組織を変えることは難しいです。↑ いったん糸を切断しないといけないからです。 切断した糸は、また繋がなくてはなりません。結び目を裏側に回すなど、細かな手間仕事が発生し、リスクも伴います。作り手としては、できるだけ回避したいのが本音です。

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●色の差、光沢の差

機械停止による「スジ」や「目飛び」が出ると、難による凹凸だけでなく、色の濃淡や光沢感に差が出るという弊害が生じます。 逆に言うと、見た目(色)の違和感が消せれば、目飛びがあっても目立たなくなるのです。地直し屋としては、糸を切って組織を変えるより、色や光沢の差を消す技術が問われることが多いです。 白生地の場合、「どんな商品に仕上げるか」によって、生地難を回避できることもあります。 今回ご紹介したスジ難や目飛びは、濃い色に染めるほど、色差が目立ちます。だから、難が軽傷なら、「濃い色に染めるのはやめて、薄モンにしはったら?」とご提案することもあります

2022年04月30日