凛マガジン(シミについて勘違い)

� シミについて勘違い

●ご相談を受けるとき

●前は、なかった!

●わかるんです!

●上級編


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●ご相談を受けるとき

凛にやってくる品物は、お付き合いのあるメーカーさん、問屋さん、悉皆屋さんなどからの持ち込み品の他、人づてにやってくる紹介があります。 お知り合いの業者さんに、口頭で品物や症状の特徴を伝え、直るかどうか、訊いてみて! というケースですね。 その際、きものの種類や難のタイプをお尋ねするようにしているのですが‥‥診断結果をご説明すると、先方さまの認識とズレていることがあります。

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●前は、なかった!

検品やテストの結果、ご説明するのに困惑するケースがあります。 以前、ワインのシミができたので落として欲しい、というご要望がありました。品物が届いて検品してみると、確かにありました、赤ワインのシミです。 検品とテストの結果、かなり古いシミだとわかりました。持ち主さまにご連絡して、かなり前についたシミですね?と確認してみると‥‥「いえ、数日前の外食で飛ばしたものです」とおっしゃって、説明を聞いてくださらないのです((+_+)) 無理に説明しても、話が前に進まないと思ったので、(^_^;)「では、先日のお出かけの前には、いつお召しになりましたか?」とお尋ねすると「さぁ‥‥2・3年か、もっと前かな」とのこと。 はい、その時期に付いたのであれば、症状とピッタリ合うんです!しかし、「この間の外出で着るときには、ありませんでした」の一点張りでした。 かなり時間が経っていることは明らかでしたが、目に留まらなかったのか、目立っていなかったのか‥‥。お客さまの認識とは異なっていました。 =

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●わかるんです!

付いてスグのシミか、時間が経っているかは、調べればちゃーんと判ります。 しかし‥‥持ち主さまの立場で考えてみたら、シミが出来た時期なんて関係ないことで、落ちれば良いのです(笑)。 なので、シミの古さについては言及するのを止め、落としてお納めしました。 キレイに落ちたから良かったものの‥‥補正する側にとって、シミの古さは重要です。どんな難も、発症から時間が経つほど、補正が難しくなるからです。 「付いてスグに送ったのに、なんで落ちないの?!」とならなくて、良かったなぁーと思います(笑)。

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●上級編

先の事例は、ご自分で付けてしまったシミで、わかりやすいのですが‥‥さらに難易度の高い、上級編?!の症状にも遭遇したことがあります。 きものの端っこに、ポツポツとカビのような点々が出ている、というご相談でした。長い間タンスに入れっぱなしだったから‥‥とのことで、持ち主さまは保管中にカビが出たと思われたようです。 ところが‥‥調べてみると、コレ、カビではありませんでした! その正体は‥‥驚くなかれ!なんと、製造工程中に、友禅の職人さんが飛ばしてしまった染料のシミだったのです。

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●新品だから

染色で付いたシミは、通常なら生産中に、僕らのような地直し職人のところに持ち込まれ、キレイにしてから工程に戻すのが原則です。 あってはいけないことですが、誰も気づかなかったのか、見逃されたのか‥‥そのまま販売されてしまったようです。 製造工程中の難ですから、消費者さまが直す必要はありません。カビではなかったことと、難の正体についても、お話ししました。が、こちらの持ち主さまも、「買った時には、こんなシミはなかった」とおっしゃるのです。 まぁ、新品のきものにシミがあるとは思いませんよね(^_^;)きものを買う時は、色合いや柄行きは気になっても、難を疑って隅々まで見ることはないでしょう。 しかしこのケースでも、「最初は付いてなかった、私が買ってからできたもので、早くキレイにして欲しいから、直してください」とのことでした。 ご要望が強かったので、販売店やメーカーには差し戻さず、そのまま直してお納めしました。しかし、消費者さまがお金を出して補正された点が気になり、最後まで気の毒だなぁーと思っていました。 付いたばかりだと思っていても、実はもっと前の汚れだった!というケースは、結構多いです。 時間が経ってから目立ってきたり、あと、意外と気づかずに見逃されていることも多いようです。いちばん良いのは、脱いだ直後に細かく見てみることですね‥‥。

2018年07月04日