凛マガジン(難にも色々)

●難のいろいろ

●B反は誰が買うの?

●補正するか、しないか

●生地屋さんの特色と「仲間」

●前職のメリット

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今年はコロナでお出かけの機会も減り、単衣(ひとえ)のきものを持っていても、着用しなかった方も多いのではないのでしょうか。着る機会がないのは残念ですが、仕方がありません。 ただ、タンスに入れっぱなしで、あとからもっと残念な結果になるのだけは避けましょう!お時間のあるときにタンスを開けて、全体を見てあげる、カラッと晴れた日に、日の当たらない部屋で陰干しをするなど、ひと手間かけてあげましょう。

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●難のいろいろ

いわゆるB反、難の出る原因や経緯、流通について連載でお届けしています。 難には、白生地段階で出たもの(生地難)、白生地が完成し、染めなどの加工中にB反になるものと、商品の完成段階によって種類があります。 生地難は、発生が白生地段階なので見つけにくく、染めや他の加工が終わってから気づかれることがよくあります。工程が進むほど、補正に手間がかかったり、悪ければ補正不可能になることもあります。 一方で、白生地段階で見つけることができれば、難の影響を受けないように工夫することができます。 染めなど、生産工程中の難も、難の種類や場所によっては、難が表に出ないようにすることは可能です。

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●B反は誰が買うの?

前号で触れましたが、機場から納品された白生地に難モノが混ざっていた場合、正反では販売できないので、生地メーカーさんの倉庫に保管されます。それがある程度たまってきて、まとめて売られることがあります。 誰が買うのか?──難の影響を受けないようなアレンジができる、生地や生産工程に関する知識があり、難を回避するノウハウを持っている人たちです。 以前書いたように、小紋にする、難が目立たないような絵柄を入れるなど、「この場所にこんな難がある→だったら、こうすれば良い」という対策ができれば、B反は大変お買い得になります。

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●補正するか、しないか

凛にも、生地難や加工途中の難の相談がたくさんあります。ただ、補正をするかどうかは、ぶっちゃけコスト次第です。 たとえば、生産工程で難が出てしまった品物で、生地代で1万円、染色の加工賃で1万円かかったとします。 検品すると、難を補正するのに5千円かかるとわかりました。ここまでのコストと、補正にかかる費用を合わせて、2万5千円。 問題は、この品物がいくらで販売されるか? です。 高級品で、数十万~百万ぐらいで売られる品物であれば、5千円と言わず、補正に数万円かかかったとしても、ちゃんと補正して品物を完成させた方が利益になります(ただし、中途半端な補正は逆効果。あくまでも、確実に補正ができる難の場合です)。 補正コストを上乗せして、利益がマイナスになるのなら、補正はせず、販売も諦める──損失を最小限に抑える選択をした方が賢明、ということになります。

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●生地屋さんの特色と「仲間」 白生地を作るメーカーさん、各社の特色といってもピンと来ないかも知れませんが‥‥会社の規模や知名度とは別に、メーカーさんごとの個性というか、特色があるんです。 メーカーさん同士は、ライバル関係である一方、互助・協力の関係もあります(ネットワークの機能があり、業界でいう「仲間」です)。 なので、難についても、この仲間ネットワークで解決することがあります。 ある難モノに関して、「ウチは対応できひんけど、Aさんやったら商品にできるんと違う?」と、内部流通で対応されることがあるのです。 難モノを抱える側は商品が売れますし、買う方は手間はかかるけど安く仕入れられるので、持ちつ持たれつになるわけです。 ==============================

●前職のメリット

やや自画自賛になりますが 地直しの仕事では、凛の前職が役立っている点があります。 凛の2人が独立する前のキャリアは、生地屋、悉皆屋、販売など、同じ呉服業界ですが、違う職業を経験してきました。 なので、前述した各生地メーカーさんの特色は、把握しています。 お預かりした商品がどこに納品されるのか、確認させてもらうことがよくあります。 最初は、「なんでそんなこと訊くの?」と言われたこともありましたが‥‥ 納品先を訊く理由は、僕らが先方の検品の基準、好みなどを把握していて、それに合う加工をして差し上げたいからです。 今では、それがきっかけでご依頼をいただくことも多いです。 こちらも、コストの話になってしまいますが‥‥要は、納品先がシビアに検品しないポイントなら、さほど丁寧に直す必要はない、ということです。 逆に、納品先の特色によっては、「これ、難になるの?」というようなものでも、検品でハネられることがあります。作り手が、難でないと断言しても、関係ありません。 「この難は、直さずに諦めた方がいいです。○○さん(=納品先)は、こういうところはキッチリ見るから」確信があれば、このようにハッキリ申し上げます。 納品先の特色に合わせてお見積りを出しているので、補正コストを最小限に抑えられ、お得感があるのかと思います。

 

2021年11月30日