凛マガジン(色の正体)

●色の正体、実は‥‥!

●草木染の色

●何パーセント?

●落ちると困る色味

●色の合わせ方

●特殊な染料なので

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●色の正体、実は‥‥!

草木染は、昔から人気のある品物です。作家さんも、人気のある方が大勢おられますし、色や風合いの魅力でも支持が高いと思います。 突然ですが、皆さま‥‥草木染の色の正体をご存知ですか?草木から抽出した色素──ハイ、そうですね。それで正解なのですが、成分的には「アク」なのです。 アクと言うとイメージが悪いですが、染料として意図的に使えば草木染、着用中にワインやコーヒーをこぼしてシミになれば「汚れ」になります。 どちらも、酸素と接触(酸化)して、色が出る性質があります。 汚れの場合は完全に落とさなくてはなりませんし、染め色の場合は元通りに調整しなくてはなりません。

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●草木染の色

草木染の作家さんの話を聞くと、毎回実験のようなところがあり、どんな色が出るかは、作家さんでも予想がつかないものだそうです。 思い通りの色に染まらず、ボツになることもあれば、予想外の色が出て、新しい作風が生まれることもあります。 草木染が「その色」になるには、偶発的な要因もあります。その色が褪せたり汚れたりしたのを、染め上がった時と同じように戻そうとするのは、かなり無理があるわけです(笑)。

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●何パーセント?

草木染には、もちろん100%植物から抽出した染液を使ったものもありますが、そうではないものもあります。 実は、何パーセント天然の草木を使っているか、配合率や製法など、規定や表示義務はありません。 こうした事情が、商品の状態をわかりにくくすることもあります。100%草木染の商品と、草木染が一部入ったもの、どちらも扱いが同列になってしまうからです。 草木染に化学染料を混ぜても、表示に「草木染」と書きたくなるのは、(良心的かどうかは別にして)まだ理解できます。草木染と入れることにより、商品イメージが上がりますから。 ところが中には、100%の草木染なのに、まったく表示がなく、化学染料で染めた品物と同列扱いになってしまうこともあるのです。 もともと、メーカーさんや問屋さんにあった在庫には証紙が付いていた──でも、その証紙が運搬や納品の際に外れてしまい、どういう品物かわからなくなってしまった‥‥みたいな事例は、結構あります。表示義務がなく、タグのように品物に縫い付けるなどの規定がないため、「検品したら草木染やった!」みたいな事例も経験したことがあります。 草木染を補正する場合、どのみち慎重にテストをしなくてはなりませんから、証紙などの添付があっても鵜呑みにせず、作業することにしています。

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●落ちると困る色味

草木染は、化学染料と違い、まったく同じ色を確実に再現することができません。逆に、そこが魅力でもありますよね。 濃い色を染めることは難しく、薄い色・淡い色が多いです。また、渋み・くすみのある色調が多いです。 補正の色合わせでは、洗剤などを使って洗うことがありますが‥‥洗うと、独特の渋み・くすみがなくなり、鮮やかなパステルカラーになってしまうことがあります。 汚れを落とすためにはやむを得ないのですが、元の色とは違うので、新たに「渋み・くすみ」を含んだ色を置いてやらないといけません。

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●色の合わせ方 褪

色したり、汚れた部分だけを、元の色と同じに戻すのですが、元の天然染料で行うのではありません。化学染料や他の反応を使って直します。 ここが色補正の最大の難関です。 藍染の号でも書きましたが‥‥補正をして元の色に戻っても、それは「その時点」での色です。何年、何十年と過ぎれば、色差が出てくるかも?!という心配は、少なからずあります。 予想できる変化をご説明してから納品していますが、発色や褪色は、どちらも神秘的です。。。

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●特殊な染料なので

色補正のご依頼の中には、「うちは特殊な染料を使っているので、よかったらこれを使ってください」と、オリジナルの染料をご提供くださることがあります。 これは天然染料に限らず、独自の色を使った品物に多いです。 「実際に使った染料なら、色も成分も同じなので便利!」と思われるかもしれません。独自開発の染料‥‥とってもありがたいお話なのですが‥‥実際にその染料で直すか?というと‥‥使わないことが多いです(笑)。 ご提供いただいた染料は、白生地を染めたものです。しかし、補正をする際の品物は、すでに染色されていて、白生地ではありません。色の入った状態でオリジナルの染料を重ねると、違う色になってしまうのです。 もちろん、メーカーさんも染色工程にはお詳しいです。僕らが色補正のために、一度色を全部抜いて、白生地と同じ状態にしてから染料を使うだろう、と想定して、染料を提供してくださってます。 が、それでも!色を完全に抜いても、それで白生地と「完全に同じ白さになるか?!」と言うと、これがまた違うんです(*_*) 微妙~に白の色味が違ったり、微妙~に生成りっぽかったり‥‥と、「白生地と、まったく同じ白」ではありません。わずかでも差がある限り、同じ染料を使っても同じ色には仕上がらないのです。 仕上がりの参考にさせてもらうことはあっても、その染料だけで補正できる、というわけにはいかないのです。 色目を見ながら、足りない要素を少しずつ足していく‥‥という地道な作業が必要になります

2020年10月05日