凛マガジン(卒業シーズン)

●卒業式
●動画を見て
●和装と慣習
●転用可能なポイント
●再々リフォーム?!
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●卒業式
卒業式のシーズンでした。 フォーマルな式典では、若者でも和装を希望する人が多いということは、認識していました。が、これほど多いとは思いませんでした。 女子は、全員が袴。 男子も、半数以上は紋付袴、残りはスーツでした(制服がないため、学生服はゼロ)。 なかなか圧巻で、娘の成長を実感したこともあり、感動しました
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●動画を見て
式の動画は、卒業生の入場から始まります。 ひとりひとり会場に入ってくるシーンは、きものの絵柄も鮮明で、職業病なのか、つい見入ってしまいました ひとつ、職人目線のお話をしますと‥‥ きものを見ると、絵柄の入り方などから、購入品かレンタルか、だいたいわかるのです(笑)。 娘にも聞いてみると、男子の紋付袴は全員がレンタル(まぁそうでしょうね)、女子は半分ぐらいがレンタル、残りの自前チームは、半分が自分の振袖、もう半分はお母さまなどのきもの(振袖や附下)だったそうです
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●和装と慣習
京都(関西)には、「十三詣(じゅうさんまいり)」という風習があります。小学校を卒業し、中学に入る年の春、寺社にお参りするのです。 十三詣は、初めて大人用の正装をする機会になります。
大人用のきものと同じ裁ち方――僕らは本身(ほんみ)と言いますが、本裁ち(ほんだち)も同じ意味です――で、「肩上げ」という調整を行うのが、十三詣で着るきものの特徴です。 肩上げは、もともとは寸法調整のための知恵だったのですが、今は、子どもらしさを出すための演出として行わるようになっています。
娘は、十三詣で振袖を作りました。奮発したのではなく(笑)、たまたまキセちゃんの手元に、娘に着せられそうな品物があったのです。
十三詣の着物は、一般的には子どもらしい、かわいらしい絵柄が多いのですが、この商品は小紋調の柄でした。卒業式で着たのも、この振袖です。
余談ですが‥‥キセちゃんの娘は小学生で一気に成長期が訪れ、小6で160センチ超え!どうなるかと思っていたら、その後は伸びなくなって、高校まで変わりませんでした。 なので、十三詣の肩上げは、本当にカタチだけ――1センチほどつまんだだけでしたし、卒業式で着るときは、肩上げを外したらピッタリ!そのまま着られました。

十三詣以降に身長が伸びると、そのままでは着られません。(実際、十三詣のきものは、十三詣で着て終わり、というケースもよくあります)。そういう意味では、親孝行をしてくれたと思います(笑)。
彼女は、高校2年の頃から、卒業式で振袖が着たいと言っていました。 呉服職人の娘やし、和装は結構やけど‥‥一人しか居てなかったら浮くなぁー‥‥なんて思っていたら、良い意味での取り越し苦労となりました(笑)。

和装が大半の卒業式――校風なのか、地域的なものなのかは、よくわかりませんが‥‥皆さまの地元はいかがでしょうか。

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●転用可能なポイント
私事はこのぐらいにして(^_^;)、一般的な話題に移りましょう。
振袖は、結婚すると着られなくなります。ただし、訪問着に仕立て直せば、結婚しても着用できます。 思い出深い振袖を、訪問着に仕立て直して、長い間着用するのは、和装の利点です。 ただし、仕立て直しで転用を可能にするには、条件があります。
まずは、絵柄の入り方。 訪問着は、振袖よりもずっとお袖が短くなります。 袖の長さは、お好みによってもかなり変わりますが‥‥

現在、一般的に普通のきものは、縫い代を含めて一尺七寸、振袖の場合は三尺五寸ぐらいですから、だいたい倍の生地量になりますね(日本人の平均身長が伸びたことで、規格も変わっていますので、古い品物ほど生地巾が短く、生地量も少なくなります)。
訪問着にした時、お袖の絵柄がチョン切れては不自然ですから、柄行きに注意しなくてはなりません。 他にも、
☆絵柄の大きさ‥‥大きすぎると、訪問着では不自然に映る
☆彩色‥‥鮮やかすぎると、ハデハデな訪問着になってしまう(補正加工により、あとから色調を暗くすることは可能)
☆絵柄のデザイン‥‥近代的なデザインより、古典的な絵柄の方が、 転用しやすいでしょう。 などなど‥‥選び方に注意することで、訪問着にリフォームしても、自然な仕上がりになるでしょう。
いずれにせよ、色柄やデザインは全体のバランスが大切です。将来、振袖を訪問着にしたければ、購入時にお店の方に相談すると良いでしょう。
※ こちらが何も言わなくても、「こちらは、のちのち訪問着にも仕立てられる柄行きで、長く着ていただけますよー!」と、店員さんから勧められることも多いと思いますが(笑)。
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●再々リフォーム?!
もうワンステップ、上級?の転用術があります。 独身時代に着ていた振袖を、結婚してから訪問着として着たい。でも‥‥娘が生まれたら、振袖として譲ってあげたい‥‥!
訪問着に仕立て直すとき、お袖を裁断してしまうと、再び振袖の袖に戻すことはできません。
ですが‥‥振袖→訪問着→もう一度振袖 を可能にする裏ワザがあります。 訪問着にするとき、お袖を裁断せず、中に折り込んで仕立てるのです。 内側に入る生地量がかなりあるので、多少のモコモコ感は否めませんが、外見に違和感が出るほどではありません。少数ではありますが、コンスタントにいただくご依頼です。 思い出深い品物だから袖を切らないで欲しい、バッサリ切ってしまうのは、もったいない! という方の他、ご自身の訪問着として購入された女性が、「今は娘が小さいけれど、将来振袖にしてあげたいから、袖を残しておいて」とおっしゃったケースもありました。
タンスで眠っているきもの、リフォームの可能性はあるのかなぁ?嫁入り時に持ってきた振袖、訪問着にできるかなぁ?‥‥

2018年05月02日