凛マガジン(外注先とのチームワーク)

●外注先とのチームワーク

●整理屋さん

●「ひと手間」の時間

●イヤなパターン・1

●イヤなパターン・2


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●外注先とのチームワーク

引き続き整理屋さんの事例で説明したいと思いますが‥‥ お取引のある5軒の整理屋さん。

それぞれ、個性や得意分野がある、と前号で説明しました。そこの特性に合った品物を依頼するのですが‥‥ 特性がある、ということは‥‥別の言い方をすれば、出す前と納品された後の風合いが、各店によって違う、ということです。

つまり、同じ品物を依頼したとしても、外注先によって仕上がりに差が生じるのです。 この「依頼から納品まで」の、店ごとの「風合いの変化度」みたいなものを、納期と理想の仕上がりから逆算する必要があります。 そのために、発注前に、凛の工房でひと手間かけてから依頼に出すことがよくあります。

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●整理屋さん

具体的に例を出しましょう。 外注に出すのは、仮絵羽になっていた訪問着です。

商品が売れたので、仮絵羽をほどいて整理をし、お客さまの寸法に仕立てることになりました。 仮絵羽は、呉服店の店頭や展示会場で「この反物を仕立てたら、どんな風に絵柄が出るのか」がわかるように、「仮に仕立てた」ものです。 本仕立てではありませんので、ガッツリ縫われていませんが、それでも一定期間、仮絵羽の状態で展示していると、どうしても仕立ての線がスジになってしまいます。

また、保管中、運搬中に生地が折れて、線が残ることもあります。難ではありませんが、仕立てる前には、生地の目を均一にして、凹凸やスジがないようにします。 各整理屋さんは、所有する設備や一度に処理できるロットなどが違います。 どこにお願いするかで、仕上がりの風合いも、所要時間も異なります。

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●「ひと手間」の時間

特殊な例を除き、ほとんどの整理屋さんでは、1日に1~3回機械を回しています。 なので、タイミングがいいと、午前中に出したものを当日に受け取ることができます。遅くても翌日には受け取れる場合がほとんどでしょう。 だったら、お客さまにも翌日納品できるんじゃないの? と思われるかもしれませんが、そうではないことがあります! 僕らが、それぞれの整理屋さんの特徴やクセを考え、お願いする前に「ひと手間」をかけることがあるからです。

「この品物は、今はこのぐらいの柔らかさだけど、上がってきたらちょっと硬めになってるやろうなぁ(一例です)」と予想します。 もし、硬めの仕上がりを避けたいなら、発注前の「ひと手間」が必要です。 この「ひと手間」にもいろんなパターン、方法がありまして‥‥1時間ほどで終わるものもあれば、2日ぐらい寝かせた方がいい場合もあります

「ひと手間」にかかる時間を、お店側の納期にプラスして、お客さまにお納めする納期が決まります。 この発注前のひと手間で、同業他社からお問い合わせが来ることがあります。 「うちも凛さんと同じ○○さんに出したのに、こんな風に上がってこなかった。なんでー?」 品物によるクセや特徴もあるのかもしれませんが、この「ひと手間」が違いを生んでるんじゃないかな?というプチ自負があります。 仕上がりが違うのなら、ひと手間をやっていないか、方法や順番が違うからだと思います。

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●イヤなパターン・1

僕らの工房には、業界内の方が複数出入りしています。

小さな場所でやっているので、お客さまが来られた時、作業の内容が見えることもよくあります。 手が止められないときは「すんませーん、コレが終わったら行くから」と、お待ちいただくこともあります。その間、作業する様子は見られています。

普通は、マネなどしないはずなのですが‥‥中には、「あのやり方なら、オレにもできるかも‥‥」と思われる方がいらっしゃいます(^_^;) ご自分でされるのは、自己責任ですから、僕らが口を挟むことではありません。 なのですが‥‥望まずして、騒ぎに巻き込まれてしまうことがあります。 「凛さん、この間作業してはったのを見て、自分でやってみたんよ。そしたら、前より難が目立ってしもた! 助けてー!」って‥‥ 本当に、こういうことを何度か経験しています。ちょっとした手順や力加減までは、傍で見ていてもわからないですからネ。

また、最近では、しみ抜きキットのような市販製品もあります。そういうのをご自身で試されて、失敗しちゃった!というご依頼も少なくありません。 チャレンジ精神は良いとして(笑)、失敗するのなら、最初から頼んでくれたらいいのに~‥‥と思います。 何より無駄だと思うのは、プロセス不明の作業を推測しながら、テストを繰り返し、補正をする時間です。

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●イヤなパターン・2

もうひとつ、イヤなパターン。僕らがお店側と「ひと手間」にかかる時間から、納期を見積もって先方に提示すると、「急いでるから、もっと早く上がりませんか?」と急かされることがあります。

これを真に受けて、猛烈に急いであげたりすると、しっぺ返しを喰らいます。 一度特急で仕上げてしまうと、次からは間違いなく100%、短納期が「当たり前」になってしまうのです。 納期は、必要な手間や時間がベースになっています。不測の事態も考えて、多少猶予は取っていますが、別にゆっくり仕事をしたいからではありません だから、意地悪するわけではないのですが‥‥すぐにお尻を叩いてくる依頼者さまには、予定より早く加工が終わっても、納品しません(笑)。

納期通りに持って行って、「ちゃんと納期通りに仕上げましたよ!」と涼しい顔をして帰ってきます(笑)。 お互いに良い関係で、良い仕事をするための対策だと思っています。

2019年09月29日