凛マガジン(着付けのルール)

●着付けのルールが変わっている?

●お太鼓の結び方

●仕立ても変化している!

●着方を知らないと、臆病になる?

●間違いじゃないのに

●師弟関係、奇妙なルール

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●着付けのルールが変わっている?

「昔の方は特に習ったわけでもなく、こちらからみればグダグダでも、ちゃんと来て日常生活・作業をしていました。でも今は「きっちり」「ここを折って」「裾から何センチ離して」「ここはこうでなくてはいけない」・・・・帯との組みあわせに至っては「ねばならない」ばかり。 昔は和装が「ふだん着」でしたし、キレイに着る、着崩れしないといった要素よりも、苦しくなく、動きやすいという着方が好まれただろうと思います。 比べて今は、ふだん着で和装される方は非常に少なくなりました。

きものは礼装、お出かけやお呼ばれで着る特別なもの、と捉える方が多いでしょう。 フォーマルなものと限定すると、着付け教室で教える内容も変わってきます。

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●お太鼓の結び方

パッと思いつくところでは、帯の種類が挙げられます。 帯には一般的に、袋帯と名古屋帯があります。名古屋帯は地名が名前になってはいるものの、もちろん名古屋以外でも、自由に着用できるものです。 両者の違いは、仕立て方、柄の入り方、長さ、お太鼓の作り方、です。フォーマルで使うのは、原則、袋帯です。

着付け教室では、両方とも教えてくれるみたいですが、今はフォーマルで着るきものが主流になっているため、名古屋帯はどうしても実践の機会が少なくなります。 そのため、あとで「どうだったっけ?」と思い出しにくかったり、「習ったけど着られるようにならない」と感じる方もあるようです。生徒さんの中には、名古屋帯を知らない方も少なくないそうです。 ※名古屋帯に関する動画がたくさん上がってますので、教室で教わらなくても習得できそうですが(笑)

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●仕立ても変化している!

フォーマルが主流になったことから、着付けだけでなく、反物の仕立てにも影響が出ています。 具体的には、袖丈です。今のきものは、袖丈はほぼ一律で、一尺三寸が標準だと思います。 が、ふだん着として着られていた時代は、紬やお召など(ふだん着仕様)は動きやすいように一尺三寸(人によってはもっと短め)、訪問着など格の高いきものは一尺五寸と、使い分けられていました。

二寸の差=7~8センチですから、かなり違いますね。 それだけ袖丈が違ったら、お襦袢も同じものは使えません。訪問着や附下げ用と、ふだん着用、最低2枚は必要です。 しかし今は、きものを着る機会が少なくなくなっているうえ、肌着まで2種類必要となると、敬遠されてしまいます。 袖でも紬でも併用できるよう、袖丈が短く統一される傾向があるのだと思います。

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●着方を知らないと、臆病になる?

日常的にきものを着なくなったため、着付けは教室に通って身につけるものだ、と考える人が多いでしょう。 もちろん、きちんと習うことには、価値があると思います。 ただ、和装することへの「気軽さ」というか、着る方の精神性が、今と昔では相当違うのではないかと思います。 昔の人は「私は体型が○○だから、ここはユルユルでいいの」みたいな、自分が心地よいと感じる着方を確立していて、それを恥じたりすることがありませんでした。

むしろ、他から何か言われても、居直れる強さがあったかと思います。 が、今は、自分の着付けで誰かから「おかしいわよ」など指摘を受けたら、ショックで、もうきものは着たくない、と思われる方もあるのではないでしょうか。

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●間違いじゃないのに

実際にあったことなのですが‥‥ きものの裾から八掛が見えないように、裏から目立たないようにまつり縫いで留める仕立て方があります。 留めた糸は表から見えませんが、エクボのようにポツポツとした凹みが見えることがあります。

このやり方、邪道でも何でもありません。仕立てた職人さんもベテランで、腕の良い方でした。ところが、それを見た人から、「こんなところにポツポツと凹みが出るのはおかしい」と指摘を受けたらしいのです。 持ち主さまは大変ショックで、「自分は今まで、間違ったものを着ていたんだ」とまで思われたそうです。 その一件でご相談に来られ、「間違いでも邪道でもないですよ」と申し上げたのですが、「おかしいと言われてしまったし、糸ははずしてほしい」とのことでした。

実際には、間違っていたのは「指摘をした人」だったのです。が、自分が間違っていたんだと思うと、自信も、楽しさも奪われてしまうんですね‥‥悲しいことです。 凛からお願いするとすれば、せめて紬やお召などの「シャレもん」は、少々着付けが我流であっても、自分らしさを楽しんで、堂々と着ていただけたら‥‥と思います。

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●師弟関係、

奇妙なルール 他に、着付け教室に通われている方に多いのが、師弟関係に関するご相談です。毎年、一定数あります。 笑うと失礼になりますが‥‥「先生よりも派手なきものは着られない」という暗黙のルールも、あったりするようです(驚)。 ご本人にしたら「ちょうどいい」つもりでも、先生のお目が厳しくて「派手すぎるわよ!」などと言われたら、教室にも通いづらくなりますね 習っているのは着付けであって、自由に楽しく着られるようになることが目的なのですが‥‥先生によっては、師弟関係が拘束になるケースがあるようです。

いちばんひどかったのは、先生の紹介先にお手入れ(洗い張り→再仕立て)を頼んだら、出す前よりも悪くなって帰ってきた、という事例。しかも、相当お高い代金を支払っておられました。 最終的に凛でお預かりして、補正をやり直したのですが‥‥経緯を聞いていると、出来上がりが悪くなったのは、洗い張りや仕立ての職人さんではなく、間に入った先生が、きちんと意向を確認していなかったからではないかと思いました。

もちろん、職人の技術は大切です。しかし僕らの経験上、トラブルは、依頼者さまの希望が把握できていない場合に多発するものなんです(-_-) 皆さまも、もし購入したお店に何か相談されるときは、「ここを、こうして欲しい、予算はいくらまで、無理なら○○で」みたいに、具体的に、解釈に違いで出ない伝え方を工夫してみてください。

2019年07月04日